
Serato DJ Pro 5.0.0.697のパブリックベータ版が公開されたので、実際にインストールして試してみました。
今回の目玉は、新しいビートグリッド解析エンジン「Lucid Beatgrids」です。
これまで自動解析では合わせにくかったテンポ変化のある曲や、複雑なイントロ・アウトロにも対応し、曲中に複数のテンポマーカーを自動で配置できるようになりました。
先に結論をまとめると、今回試した範囲では以下の結果でした。
従来よりビートグリッドの精度が明らかに上がった 特にTransitionやPsyで改善を実感した FixedよりFlexibleの方が正確だった 再解析しても既存のキュー、ループ、旧ビートグリッドは維持された SpotifyとBeatportを同時に有効化し、問題なく切り替えられた MacBook Pro 2020 Intelでも安定して動作した
まだベータ版ではありますが、ビートグリッドのズレに悩んでいた人なら、今すぐ試してみる価値のあるアップデートだと思います。
※本記事はSerato DJ Pro 5.0.0.697パブリックベータ版を試した時点の内容です。正式版では仕様が変更される可能性があります。
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✔︎Serato DJ Pro 5.0の最大の変更は「Lucid Beatgrids」

Serato DJ Pro 5.0では、ビートグリッドの解析エンジンが新しくなりました。
これまでのSeratoは、基本的に曲全体をひとつのBPMとして解析するのが得意でした。一方で、次のような曲は自動解析後にグリッドがズレることがあります。
曲中でテンポが変わる曲 生ドラムなどでテンポが一定ではない曲 イントロやアウトロのリズムが複雑な曲 TransitionのようにBPMが変化する曲
新しいLucid Beatgridsでは、BPMの変化を検出すると、曲中に複数のテンポマーカーを自動で設定します。
つまり、曲の最初だけを基準に一定間隔のグリッドを並べるのではなく、曲中のテンポ変化に合わせてビートグリッドを追従させる仕組みです。
✔︎FlexibleとFixedの違い

Serato DJ Pro 5.0の解析設定では、Beatgrid Modeを「Flexible」と「Fixed」から選択できます。
✔︎Flexible(柔軟な)
Flexibleは、曲中のBPM変化を検出して複数のテンポマーカーを設定するモードです。
テンポが途中で変わる曲や、生演奏のようにわずかにテンポが揺れる曲に向いています。最初に検出されたダウンビートより前にもテンポマーカーを設定できます。
✔︎Fixed(固定)
Fixedは、1曲に対してひとつのBPMとひとつのダウンビートを設定する従来型のモードです。
構造はこれまでと同じですが、最初のダウンビートを検出する精度は以前のバージョンより向上しています。一定のBPMで制作されたテクノやハウスなどは、Fixedでも十分使いやすいと思います。
✔︎FlexibleとFixedを実際に比較
今回は、同じ環境でFlexibleとFixedの両方を試しました。
幅広いジャンルで以前より解析精度が上がったと感じましたが、特に効果が大きかったのはTransitionとサイケデリックです。
比較した結果、個人的にはFlexibleの方が正確でした。
Transitionの曲は途中でBPMが変わるため、これまでは変化する位置に合わせてビートグリッドをひとつずつ手動で調整していました。
Flexibleでは曲中のBPM変化に合わせてテンポマーカーが自動で設定されるため、この作業がかなり楽になります。
TransitionをDJセットへ取り入れる人にとって、今回のアップデートは特に効果が大きいと思います。
サイケをプレイするときも、従来はイントロとビートの位置がズレてしまい、曲全体が本来とは異なるBPMで解析されることがありました。グリッドを直さずにミックスすると、当然ながら途中でズレが目立ってしまいます。
Serato DJ Pro 5.0で同じような曲を解析したところ、イントロからビートまでグリッドがまったくズレず、快適にDJをすることができました。今回試した中では、ここが最も進化を実感できたポイントです。
もちろん、すべての曲が完全に合うとは限りません。しかし「自動解析したあとに毎回手直しする」という作業は、かなり減らせそうです。
現在のダンスミュージックは打ち込みで制作されている曲が多く、一定BPMの一般的な楽曲なら、もともと大きくズレることはほとんどありません。そのため、すべてのDJが劇的な変化を感じるわけではないと思います。
一方、Transitionのように曲中でBPMが変わる曲や、Psyのようにイントロの構成によって解析を誤りやすい曲を使うDJには、かなりおすすめできます。
一定BPMの曲はFixed、テンポが変化する曲や従来の解析でズレる曲はFlexibleという使い分けが良さそうです。
✔︎BPM変化をBar単位・Beat単位から選べる

新しいビートグリッドでは、BPM変化をどの細かさで反映するかも選べます。
BPM Changes on Bars Only:小節単位で変化を反映。テンポマーカーが少なく、グリッドが滑らか BPM Changes on Beats:拍単位で変化を反映。マーカーは増えるが、より細かく追従
テンポが大きく変わるTransitionなどは、Beat単位の方が正確に追従しやすくなります。
一方、細かなBPM変化まで拾う必要がない曲では、Bars Onlyの方がグリッドを確認しやすいでしょう。
波形上にはBPMが変わった位置も表示されます。すべての変化を表示するか、大きな変化だけにするか、非表示にするかを設定できるため、曲のどこでテンポが動いているかも把握しやすくなりました。
✔︎再解析しても既存のキューやループは消えなかった
新しいビートグリッドを使うには、楽曲の再解析が必要です。
そこで心配になるのが、これまで設定したキューポイントやループ、手動で調整したビートグリッドへの影響です。
今回、実際に再解析して確認したところ、既存のキュー、ループ、旧ビートグリッドはすべて維持されていました。
新しい形式のビートグリッドは、既存のデータとは別に保存される仕組みです。そのため、再解析しただけで今までのグリッドが上書きされるわけではありません。
また、古いバージョンのSerato DJで曲を読み込んだ場合は、以前のビートグリッドに自動で戻ります。ただし、新しいFlexible Beatgridしか保存されていない曲は、旧バージョンではグリッドが表示されない点に注意してください。
大切なライブラリをいきなり全曲再解析するのが不安なら、まずは数曲だけ選んで試すのがおすすめです。
✔︎SpotifyとBeatportを同時に使える「Open Streaming」

Serato DJ Pro 5.0では、複数のストリーミングサービスへ同時にログインできるようになりました。
私は普段からSpotifyとBeatportの両方を使っていますが、これまではSerato上でサービスを使い分ける必要がありました。
両方を同時に使いたいときはRekordboxを使っていたため、選曲するサービスによってDJソフトまで切り替えていた形です。
今回はSpotifyとBeatportを同時に有効化して試しましたが、両方を問題なく切り替えられました。この2つのサービスの境界がなくなり、Seratoの中だけで選曲を完結できるようになったことは、個人的にかなり大きな変化です。
これまではサービスを切り替える手間がありましたが、Open Streamingでは各サービスがクレート一覧に表示され、検索バーのボタンから切り替えられます。
Spotifyで見つけた曲とBeatportの楽曲を行き来しながら選曲できるため、途中でDJソフトを変更する必要がありません。
複数のストリーミングサービスを併用している人にとって、Open Streamingは単なるサービス追加ではなく、普段のDJ環境そのものをシンプルにしてくれる機能だと思います。
ただし、今回のベータ版には録音後にストリーミング曲をデッキへ読み込めない場合があるなど、ストリーミング関連の既知の不具合があります。本番で使う前には、自分の環境で一度動作を確認しておいた方が安心です。
SpotifyをSerato DJ Proで使う方法や、実際に使った感想はこちらで紹介しています。
Beatport Streamingを約5年間使って分かったメリット・注意点はこちらです。
✔︎Cue Loopsも追加

Serato DJ Pro 5.0では「Cue Loops」という新機能も追加されています。
これは、キューポイントへの移動とループの開始を、パッド1回の操作で同時に行える機能です。
設定画面でCue Loopsを有効にしたあと、ループを作成し、再生位置がループ内にある状態で空いているキュースロットを押すと登録できます。
ブレイクを延長したいときや、短いボーカル・フレーズをループさせてミックスに使いたいときに便利そうです。
✔︎そのほかの主な変更点
Serato DJ Pro 5.0では、ほかにも実用的な変更が加わっています。
Protect Libraryが復活 M3Uファイルの読み込みに対応 Historyパネルに「Reset Played Tracks」を追加 Explicit列を追加 TIDALとSoundCloudで提供元のKey・BPMを表示 ストリーミング曲を各サービスのお気に入りへ直接保存可能 大規模ライブラリでの検索結果表示を高速化 アプリの起動時間を改善 クラッシュや音声関連など複数の不具合を修正
派手な新機能だけでなく、起動や検索、ライブラリ操作の改善も含まれています。
✔︎MacBook Pro 2020 Intelでの動作
今回使用した環境は、MacBook Pro 2020のIntelモデルです。
新しいビートグリッドでの再解析、FlexibleとFixedの比較、SpotifyとBeatportの切り替えを試しましたが、動作は安定しており、特に問題はありませんでした。
少なくとも今回試した範囲では、Intel Macだから極端に重い、頻繁に落ちるといった症状はありません。
ただし、Serato DJ Pro 5.0はmacOS 11 Big Sur以前にはインストールできません。また、接続するDJコントローラーやオーディオインターフェースによって状況が変わる可能性があります。
✔︎ベータ版で確認されている主な不具合

Serato公式のリリースノートでは、次のような既知の不具合が案内されています。
録音後にストリーミング曲をデッキへ読み込めない場合がある 別サービスの曲を再生中は、無効にしたストリーミングサービスを再度有効化できない 録音後、メーターは反応してもストリーミング曲の音が出ない場合がある Numark NVIIで最新ドライバー導入済みでも、ドライバーのインストール案内が出る XDJ-AZでストリーミング曲などの波形概要やアルバムアートが表示されない XDJ-AZを接続したまま再起動すると、デッキが「IN USE」のままになる
回避方法が用意されているものもありますが、ベータ版をイベントや現場へそのまま持ち込むのはおすすめしません。
普段使っている正式版の環境を残し、まずは自宅で解析精度や使用機材との相性を確認してください。
✔︎Serato DJ Pro 5.0ベータ版は試す価値あり

Serato DJ Pro 5.0の中で、最も大きな進化を感じたのはLucid Beatgridsです。
実際にFlexibleとFixedを比較したところ、幅広いジャンルで従来より精度が上がりました。
特に、これまで手動でグリッドを打ち直していたTransitionでは作業を減らすことができ、Psyではイントロが原因の解析ズレもなく、快適にDJができました。
再解析しても既存のキュー、ループ、旧ビートグリッドが維持された点も安心材料です。
また、これまでSpotifyとBeatportを同時に使うためにRekordboxを選んでいた場面も、Serato内で完結できるようになりました。両サービスを普段から使い分けている私にとって、この境界がなくなったことはビートグリッドの進化と並ぶ大きな変更点です。
SpotifyとBeatportの同時利用は問題なく、MacBook Pro 2020 Intelでも安定して動作しました。
まだベータ版なので本番運用には注意が必要ですが、以下に当てはまる人なら試してみる価値があります。
ビートグリッドを手動で直すことが多い BPMが変化する曲を使う Transitionのグリッドを手動で調整している Psyのイントロが原因でBPM解析がズレることがある 複数のストリーミングサービスを使い分けたい SpotifyとBeatportを同時に使うためRekordboxへ切り替えている 正式リリース前に新機能を試したい
一般的な打ち込み曲しか使わない場合、ビートグリッドの違いを感じる場面は少ないかもしれません。しかし、TransitionやPsyを使うDJにとっては、解析後の手直しを減らし、プレイ中のズレを防いでくれる実用的なアップデートです。
個人的には、新機能を増やしただけでなく、DJプレイ前の地味な準備を減らしてくれるアップデートだと感じました。
正式版でのさらなる安定化にも期待したいところです。



